開発行為って何?

「開発許可」とは、一部の「開発行為」を行う際に必要な許可です。

都市計画に関して「開発」と聞くと、「住宅開発」「駅前再開発」などを連想します。多数の建設機械を使って土地のありようを変えるイメージです。それでは、「行為」のついた「開発行為」とは何を意味するのでしょうか。

都市計画法第4条では「主として建築物の建築又は特定工作物(注1)の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう」と定義しています。

開発行為
建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更

「建築物」とは、建築基準法第2条第1号に定める「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」をいいます。この定義によると、囲いだけの工作物は建築物ではありません。プレハブは壁も屋根もあるので建築物です。「建築」とは同条第13号の「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること」です。

(注1)特定工作物とは、第1種特定工作物はコンクリートプラントなど、第2種特定工作物は、ゴルフコース、1ヘクタール以上の運動・レジャー施設、墓園などです。

「区画形質の変更」って何?

「土地の区画形質の変更」とは、わかりにくい表現です。「区画の変更」「形質の変更」「性質の変更」のいずれか一つでも該当すれば、「土地の区画形質の変更」にあたります。道路などを作って土地の輪郭が変わる、土を削ったり、盛ったりして土地の表面の状態を変える、用途を転換して土地の性質を変える、といったことが「区画形質の変更」です。

区画の変更道路などの新設、変更、廃止
形質の変更切土、盛土などの造成行為
性質の変更農地などを宅地に変更する行為

注意すべき点があります。建物の基礎打ちや掘削は、造成の一環のように思えますが、これは「形質の変更」、つまり開発行為にあたりません。したがって、既に建物が建っている宅地では区画を変えない限り、基礎打ち、掘削をしても開発許可不要です。

国土交通省の「開発許可制度運用指針」

「建築物の建築自体と不可分な一体の工事と認められる基礎打ち、土地の掘削等の行為は、規制の対象とはならないこと。従って、既に建築物の敷地となっていた土地又はこれと同様な状態にあると認められる土地においては、建築物の敷地としての土地の区画を変更しない限り、原則として規制の対象とする必要はないと考えられる」

建物を建てるために土地のカタチを変えること

開発行為は、簡単に言うと、建物を建てる目的で、土地のかたちを変えることです。目的が違えば行為があっても対象外です。建物を建てないのであれば、土地のかたちを変えても開発行為にはならないわけです。農地転用では、青空資材置場や青空駐車場は開発行為に該当しません。

開発行為の一部が開発許可の対象

開発行為と開発許可の関係

開発行為だからといって、必ずしも開発許可が必要なわけではありません。開発行為のうちの一部が開発許可の対象になるのです。都市計画法29条(文末参照)では、原則として開発行為には開発許可が必要であることを唱えるとともに、許可がいらない開発行為を列挙しています。

まず、市街化調整区域以外では、面積が狭いと許可は不要になります。市街化区域の場合、奈良県のでは500㎡未満は規制されません。

規制対象となる開発行為の面積

都市計画区域

市街化区域1,000㎡(三大都市圏の既成市街地などは500㎡)以上の開発行為
開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可
奈良県では500㎡以上の開発行為
市街化調整区域すべての開発行為。ただし、農家住宅などの例外あり
非線引き都市計画区域内3,000㎡以上の開発行為
開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可

準都市計画区域

準都市計画区域3,000㎡以上の開発行為(奈良県も同じ)
開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可

都市計画区域および準都市計画区域外

都市計画区域および準都市計画区域外1ha以上の開発行為(奈良県も同じ)
都市計画区域の説明図

このほか、都市計画区域又は準都市計画区域内では、許可を受けなくても公益的な行為、軽微な行為は認められます。

  • 公益上必要な建築物
    鉄道施設、図書館、公民館などで、開発区域・周辺地域の土地利用に支障がない建築物
  • 通常の管理行為、軽易な行為
    仮設建築物、車庫、物置、10㎡以内の増築など
  • 非常災害のための応急措置
  • 都市計画事業、土地区画整理事業など

規制が厳しい市街化調整区域

市街化調整区域は、原則、すべての開発行為に許可が必要ですが、例外的に、農業に関するものは規制対象外になります。

市街化調整区域で開発許可がいらない施設

  • 農林水産業の用に供する施設
    温室、畜舎、農機具収納施設など
  • 農林漁業を営む者の住宅
    農家住宅は開発許可が不要だが、分家住宅は開発許可が必要

 

開発行為がなくても建築許可がいる

市街化調整区域については、もうひとつ理解しておくべきことがあります。それは、市街化調整区域では、開発行為が原則、禁止だけではなく、開発行為がなくても、たんに建築物を建築するだけで許可を得なければできない、ということです。農業や公益に関するものは許可は不要ですが、これらを許可なく別の用途の使ってはいけません。都市計画法第43条で定めているルールです。

ただし、仮設建築物の新築や通常の管理・軽易な行為は許可なくできます。

許可申請で必要な書類は?

開発許可申請では、たくさんの書類が求められます。

土地計画法第30条で挙げられているのは、以下の内容を記載した書類です。

  • 開発区域の位置、区域及び規模
  • 開発区域内において予定される建築物又は特定工作物の用途
  • 開発行為に関する設計
  • 工事施行者
  • その他国土交通省令で定める事項

このうち設計図面は、開発区域の面積が1ヘクタール以上の開発行為では、1級建築士や一定の学歴・実務経験を持つ人かし作成できないことになっています(都市計画法施行規則第18条、19条)。

開発許可に関する、よくある誤解

✖ 市街化調整区域の開発行為のみ開発許可が必要

市街化調整区域だけでなく、市街化区域、準都市計画区域などでも、一定面積以上の開発行為には、開発許可が必要です。市街化調整区域では、原則、開発許可が必要なので、こういった誤解が生まれたのでしょう。

✖ 市街化調整区域なら資材置場でも開発許可が必要

建物を建てる目的がなく、ゴルフ場など特定工作物にも該当しないなら、広い土地の区画形質を変更しても開発行為には当たりまん。

✖ 開発許可の対象になるものだけが開発行為

開発許可が必要であれば、それは開発行為、という考え方は正しいのです。しかし、開発許可が不要であれば、開発行為ではない、というのは正確ではありません。先ほど述べた通り、面積要件などで開発許可が要らない開発行為はあります。

✖ 住宅や工場を建てるときだけ開発許可がいる

都市計画法は、建築物の建築と特定工作物の建設の際に開発許可を求めています。建築物とは、住宅ばかりではなく、柱か壁があって、その上に屋根がついているもの、例えば倉庫なども該当します。特定工作物にあたる1ヘクタール以上のレジャー施設、運動施設なども規制対象です。

関連条文
▽都市計画法第29条
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(略)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの
二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
三 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為(以下略)

都市計画法

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