農地を転用すると年金をもらえなくなるのですか
転用で特例付加年金ストップ
農家が受け取る年金は、いわゆる1階部分が国民年金、2階部分が農業者年金です。農業者年金に加入していると、農業者老齢年金と特例付加年金を受け取ることができます。農地転用すると、このうち特例付加年金の支給が原則中止になります。農業者老齢年金は引き続き支給されます。
農地転用をして収益が発生しても、支給停止となる特例付加年金額より大きくないこともありえるので注意が必要です。
また、特例付加年金がなくなることを知らずに、農地転用のための契約をしてしまう人も少なくありません。
農家の年金
農業者年金
農業者老齢年金 | 65歳以上75歳未満の間で、自分で選んだ時点から受給開始となり、終身給付されます。年金額は運用益によって変わります。 |
特例付加年金 | 被保険者の保険料拠出を国が補助し、この補助を原資に、原則65歳以上に特例付加年金を支給します。 |
国が補助金を出す年金
農業者年金は、独立行政法人農業者年金基金が運営している年金です。農家の老後の生活を支えるだけではなく、次代の農家を確保することも目的としています。社会保障と同時に農政上の目的があるため、国が補助している点が特徴です。
この国庫補助を原資として支給されているのが特例付加年金です。国のお金を基にした年金をもらえるという優遇された面があるものの、支給にあたっては制約があります。
特例付加年金の支給の要件は、
- 保険料を納付した期間などの合計が20年以上
- 経営継承等により農業を営む者でなくなること
の二つです。
②は農業者年金ならではの要件です。農地の経営を引き継ぐ人を作った上で農業をやめないと特例付加年金を受給することはできません。単に、耕作をやめて、農地を放置しているだけでは、支給対象にならないのです。
受給の際に農地法3条許可書
受給するためには、農業委員会に「農業を営む者でなくなったことの届」を提出しなければなりません。添付書類としては、農地を農地のまま引き継ぐ農地法第3条の許可書の写しや、売買、贈与、賃貸、使用貸借の契約書の写しを求められます。農地法第4条や第5条に基づいて農地を転用すると、農地ではなくなりますので、この届を受け付けてもらえません。
農業を営む者でなくなったことの届
支給停止の4つの理由
注意しておかなくてはならないのは、いったん農地法第3条申請などをして後継者に貸し、特例付加年金の受給が始まった後でも、「農地をどう使ってもいい」というわけにはいかないことです。後継者から農地を返してもらって転用すると、特例付加年金は原則として支給停止になります。
農業者年金基金は、特例付加年金の支給停止となる理由を4つ挙げています。
- 農業経営を再開したとき(農業を営む法人の常時従事者たる構成員を含みます)
- 後継者に貸し付けた農地等の返還を受けて1年を経過又は転用等したとき
- 後継者に貸し付けた農地等について、その後継者が他者にその権利を移転又は設定したとき
- 後継者に貸し付けた農地等の返還を受けて1年を経過する前に農業委員会の利用意向調査を受けたとき(耕作放棄地になっているという意味です)
こうした理由に当てはまり、JAに「特例付加年金⽀給停止事由該当届」を提出すると、特例付加年金が⽀給停⽌となります。届けが遅れると、受け取った年金の返還を求められます。
支給が止まらないケースも
ただし、支給停止要件に該当しても支給が停止しされない場合があります。それは▽農業用施設(農産物の加工、販売等施設を含む)用地にする場合▽受給者、後継者、後継者以外の直系卑属の住宅用地とする場合▽体験農場、公民館、公園等にする場合などです。農家や子供の住宅、農業や公共的な用途に使われるのであれば、支給停止にはなりません。
関連条文
独立行政法人農業者年金基金法
▽独立行政法人農業者年金基金法第32条
特例付加年金の額は、(中略)国庫補助の額のうちその者に係るもの及びその運用収入の額の総額を基礎として、予定利率及び予定死亡率を勘案して政令で定めるところにより算定した額とする。
▽同第34条
特例付加年金は、受給権者が農業を営む者となったとき、その他の政令で定める事由に該当するに至ったときは、その該当している期間、その支給を停止する。
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