相続においては届出先となり、農地転用や売却に関しては申請先となるのが農業委員会です。原則として、農地のある市町村には、一つ設置することになっていて、全国で1702の農業委員会があります(令和2年10月時点)。市町村から独立して合議制で事務を行う「行政委員会」の一種です。

どんな仕事をするところ?

農業委員会の主な業務は、農地法に定める許可などと農地利用の最適化です。最適化とは▽農地の集積・集約化▽有休農地が発生しないようにする▽新規参入を促す――などです。無秩序に売買や転用が行われると「最適化」できなくなるため、農業委員会がチェックする仕組みになっています。

最適化がいわれるのは、日本の農業では、有休農地が増加する一方で農業経営の規模拡大が進まず、生産効率が低いことが問題視されているからです。

農業委員会の事務

必須事務農地の売買、賃貸の許可
農地転用についての意見具申(許可権限は原則、都道府県知事)
遊休農地に関する措置
農地利用の最適化の推進
任意事務農業に関する調査、情報の提供
農業経営の合理化、法人化

農業委員会の構成は?

農業委員会は「農業委員」と「農地利用最適化推進委員」で構成されます。農業委員は、市町村長が議会の同意を得て任命します。任期は3年。推進委員については農業委員会が適任者に委嘱します。任期は、農業委員の任期満了までです。

農業委員と推進委員は特別職で非常勤の地方公務員になります。定数は条例で定めます。農業委員会が公募し、団体や個人から推薦を受けます。当事務所がある奈良県橿原市の場合、「農業委員会の委員等の定数に関する条例」で農業委員は14人、推進委員は11人」と定められています。

農業委員と推進委員の役割

農業委員と推進委員の役割

農業委員農地利用最適化推進委員
全般毎月開かれる総会などで案件を審議して決定する担当地区において現場活動をする。総会での議決権なし
農地の権利移動許可・不許可の決定農業委員に意見を述べる
農地転用具申すべき意見の決定農業委員に意見を述べる
農地利用の最適化推進指針指針の決定農業委員に意見を述べる
指針を踏まえ現場活動

大まかに言うと、推進委員が現場で活動し、農業委員は推進委員の意見を聴いて審議、決定します。とはいうものの、実際には農業委員も現場活動を行っています。

農業委員ってどんな人?

農業委員になれるのは「農業に関する識見を有し、農地等の利用の最適化の推進に関する事項その他の農業委員会の所掌に属する事項に関しその職務を適切に行うことができる者」です。つまり、農業について詳しくて、職務を全うできる人であればなることができます。このほか、

  • 認定農業者等が過半数
  • 「中立委員」が1人以上
  • 委員の年齢、性別等に著しい偏りが生じないよう配慮

することが法律で決められています。

認定農業者とは?中立委員とは?

認定農業者とは、経営改善計画を市町村が認定した農業者です。経営規模の拡大や生産方式の合理化に熱心な人、法人です。全国で23万3806経営体、奈良県で1003経営体が認定されています(令和2年3月末現在)。認定農業者を農業委員の過半数としたのは、やる気がある農家に地域を引っ張ってもらいたいからでしょう。中立委員とは、農業分野以外の人で、農業委員会の所掌事項に利害関係のない人たちです。弁護士、行政書士、会社員、教育関係者などが該当します。「年齢や性別の配慮」は、女性、青年の積極登用を求めるものです。

農業委員は報酬をもらえるの?

農業委員、推進委員は特別職の地方公務員ですので報酬が出ます。支給されるのは基本給と能率給です。額は市町村によって異なります。

基本給近畿地方A市中国地方B市
農業委員基本給(月額)月額3万4000円月額3万2100円
推進委員基本給(月額)月額3万2000円月額3万2100円

能率給の金額は、農地利用最適化交付金の範囲内で市長が定めます。

農業委員会の問題点は?

農業委員会に関しては、

  • 農業委員が名誉職になっていて活動が低調
  • 許可業務などの処理で忙しく、最適化に取り組む余裕がない
  • 事務局の人員不足している

などの問題点が指摘されています。

関連条文
農業委員会等に関する法律8条
委員は、農業に関する識見を有し、農地等の利用の最適化の推進に関する事項その他の農業委員会の所掌に属する事項に関しその職務を適切に行うことができる者のうちから、市町村長が、議会の同意を得て、任命する。
2 委員の定数は、農業委員会の区域内の農業者の数、農地面積その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、条例で定める。
(3、4略)
5 市町村長は、第一項の規定による委員の任命に当たつては、次の各号に掲げる者が委員の過半数を占めるようにしなければならない。ただし、その区域内における認定農業者(農業経営基盤強化促進法第十三条第一項に規定する認定農業者をいう。以下同じ。)が少ない場合その他の農林水産省令で定める場合は、この限りでない。
一 認定農業者である個人
二 認定農業者である法人の業務を執行する役員又は農林水産省令で定める使用人
6 前項に定めるもののほか、市町村長は、第一項の規定による委員の任命に当たつては、農業委員会の所掌に属する事項に関し利害関係を有しない者が含まれるようにしなければならない。
7 市町村長は、第一項の規定による委員の任命に当たつては、委員の年齢、性別等に著しい偏りが生じないように配慮しなければならない。

農業委員会等に関する法律

農地転用、農地の相続、農地の売買・貸借のことなら奈良県橿原市の行政書士中園事務所にお任せ下さい。<対応地域:奈良県内全域、大阪府・京都府・三重県の一部>

0744-38-9344

月~土 9:00~19:00

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA