国の太陽光発電設備に関する規制について、簡潔にまとめたものはありますか

太陽光発電設備(特に野立て設備)の規制について、国は具体的にどのような基準をもっているのでしょうか。

太陽光発電の推進・規制には、経産省、農水省、国交省、環境省が関わっており、それぞれに所管法令、ガイドライン、基準的なものがあります。しかし、国民にとっては、ひとつの事柄について縦割りでいろいろとルールがあるのはわかりにくく、役所にとっても、スムーズな連携の支障になっていました。

4省庁の見解を集約

そこで、こうした省庁の課長らが話し合って、基本方針を横断的にまとめましたものがあります。

令和5年5月25日付けの「太陽光発電設備の開発許可等の基準や運用の考え方について」(以下、「考え方」)です。この時点での、太陽光発電設備に対する国の許可基準についての考え方を集約しています。自治体の担当者に対して「許可基準の運用にあたって参照しなさい」という書類ですので、太陽光発電事業者などは目を通しておくべきでしょう。

太陽光発電設備の弊害とは?

太陽光発電設備の弊害としては、地表の広い部分を太陽光パネルが覆うことによって①雨水が地表の一部に集中的に落ちること②地表に光が届きにくくなるため植生が乏しくなること――があります。これにより、雨水の流出量や流下速度が増し、雨水が地中に浸透しにくくなり、土砂が流出の危険性が増します。

14項目の技術基準

「考え方」では、太陽光発電設備のこうした特性を踏まえ、14項目にわたって許可に関する技術的な基準を示しています。以下、その概要です。

斜面への設置
盛土・切土
地盤強度
排水対策
法面保護・斜面崩壊防止策
防災施設の先行設置
事業者の施工能力の確認
設備設計関係
開発行為の一体性
10事業実施期間における連絡体制構築
11運転開始前における関係法令に基づく許可取得状況及び工事等完了の確認
12施工後の管理の継続性
13立入検査等を通じた既存案件のフォローアップ
14事業終了後の措置

①斜面への設置

  • 勾配は原則として 30 度未満とする。
  • 勾配 30 度以上の傾斜地に設置する場合は、擁壁や排水施設、法面保護工等の防災施設の設置を行う
  • 30 度未満の傾斜地でも、災害の可能性が高い場合は同様の防災措置を講ずる

②盛土・切土

  • 盛土高が15mを超える場合は、安定計算によって地盤の安定が保持されることを確認する
  • 盛土高が5mを超える場合は、原則として、高さ5m 程度ごとに小段を設置する
  • 切土高が10mを超える場合は、原則として、高さ5mないし10mごとに小段を設置する
  • 盛土及び切土の法面の勾配は、原則として30度以下にする
  • 盛土は、1 層の締固め後の仕上がり厚さを概ね 30cm 以下として土を盛り、その層ごとに締め固めをし、必要に応じて排水施設の設置する

③地盤強度

  • 土が滑り、緩み、沈下し、又は崩壊するおそれがある場合には、盛土を行う前の地盤の段切り、地盤の土の入れ替え、排水施設の設置などを行う
  • 切土を行った後の地盤に滑りやすい土質の層がある場合には、その地盤に滑りが生じないように杭打ち、土の置き換えをする
  • 造成地、傾斜地などの脆弱地盤は、必要に応じ、セメント系固化材の添加や混合、締固め等の地盤改良工法を行う

④排水対策

  • 雨水や湧水等を適切に下流に流下させるための排水施設や調整池を設置する
  • 雨水流出量の評価に用いる流出係数は、0.9~1.0 に設定する
  • 地下水によって土砂の崩壊・流出が生ずるおそれのある盛土の場合には、盛土内に地下
  • 水排除工や水平排水層を設置する
  • 下流の流下能力を超える水量が排水されることによって災害が発生するおそれがある場合には、調整池等を設置する

⑤法面保護・斜面崩壊防止策

  • 太陽光パネル下の地表面の緑化や構造物工による法面保護、擁壁の設置等による斜面崩壊防止策をとる
  • 法面保護としては、斜面の雨水を分散させる柵工や筋工、植生マット等の伏工等の措置を講じる
  • 斜面崩壊防止策として小段や排水施設では不十分、不適切な場合は、擁壁を設置する
  • 開発行為に伴い相当量の土砂が流出し下流地域に災害が発生するおそれがある場合には、開発行為に先行して十分な容量・構造のある堰堤や沈砂池などを設置する
  • アレイ列の雨垂れによって地表面侵食のおそれがある場所には、雨どいやU字溝を設ける

⑥防災施設の先行設置

  • 太陽光発電設備は、防災施設の先行設置を徹底する
  • 主要な防災施設を先行して設置するまでの間は、他の開発行為の施工を制限する

⑦事業者の施工能力の確認

申請者が施工の委託・再委託や事業の権利移転を行うケースがあり、防災施設の先行設置等を確実に履行できるか確認するため、開発申請者や施工事業者の施工能力(施工計画、 事業実施体制、施工実績、資金計画)を把握することが望ましい

⑧設備設計関係

運転開始後に適切な保守点検ができるよう、保守点検業者が設計の段階から関わり、アレイ間の通路・スペースを十分に確保した設計を行う

⑨開発行為の一体性

規制逃れのため、事業者の変更や設置場所の分散によって、一体の開発行為か否かの判断が難しい事例があるため、開発行為の一体性については、以下の観点から 総合的に判断を行う

  • 実施主体の同一性(資本関係や事業譲渡関係、 工事施工者、 管理主体、 地権者等)
  • 実施時期の同時性(個々の発電設備の工事時期、 送電網の接続時期等)
  • 実施箇所の同一性又は近接性(柵や塀等で区切られた同一構内、 変圧器や送配電線等の電気設備や防災施設等の一体性及び近接性、他事業者と 共同して隣接を避ける例等)
  • 工事の同一性(作業同一の工程、 手続きの同一性等)

⑩事業実施期間における連絡体制構築

  • 経済産業省と一般送配電事業者との間で、再エネ事業者の保安業務従事者に関する情報の共有を図る。
  • 発電事業者、保守点検責任者、関係省庁、地方公共団体の間で円滑に問題に対処するため、経済産業省を中心とした連絡体制を確立する。

⑪運転開始前における関係法令に基づく許可取得状況及び工事等完了の確認

  • 再エネ特措法では、FIT・ FIP 認定の審査時に、土地開発に関する関係法令に基づく許可取得を申請要件とする
  • 電気事業法においては、工事計画の届出時において関係法令に基づく許可取得状況等を確認し、使用前自己確認結果の届出時に、工事の完了確認を得ていることを確認する

⑫施工後の管理の継続性

  • 開発許可の段階で太陽光発電設備や防災施設等の維持管理計画を作る
  • 維持管理計画では、スケジュール、人員配置、維持補修工事などを定める

⑬立入検査等を通じた既存案件のフォローアップ

  • 災害リスクの高い太陽光発電設備については、優先的に電気事業法等に基づく立入検査を実施し、必要に応じて指導を行う
  • 検査結果は、必要に応じて省庁や地方公共団体で共有する

⑭事業終了後の措置

  • 太陽光発電事業の廃止後、太陽光パネル等の設備の撤去までの間、 発電事業者の責任を前提としつつ、適切に維持管理するとともに、関係法令を遵守し、可能な限り速やかに撤去・処分を行う
  • 設備廃止後の適正な土地の管理を担保するため、整地等の事後措置を行うことを基本とし、事業終了後の土地の取扱いに関し事業者が予め計画を策定する
  • 関係省庁や地方公共団体は、必要に応じて植栽や法面保護工に関する指導を行うとともに、土地所有者との契約等で原状回復を行う旨を取り決めることを指導又は奨励する

近隣対策にも言及

太陽光発電設備では、近隣住民とのトラブルが発生することがあるため、「考え方」では、「地域理解」についても一項目さいていて、住民とのコミュニケーションや住民への情報提供を求めています。

地域理解の促進に向けた適切な情報の提供

  • 太陽光発電設備の設置に当たっては、 発電事業者の地域に対するコミュニケーション不足から、トラブルが生じる例も報告されており、 環境や景観への影響、災害に対する地域の懸念に対応するため、 地域住民との適切なコミュニケーションを図ることが大前提となる
  • 関係法令の許可に基づく 開発行為を進めるに当たって、事業計画内容に加え、本申合せで整理された事項を中心とした安全面への影響や防災措置について情報提供が行われることが望ましい。
  • 再エネ特措法において、 FIT・ FIP 認定の際に、説明会の開催等、地域への事業内容の事前周知を認定要件化する制度改正を踏まえた措置等を講じていく

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