農業に携わらない人々にはあまり知られていないのが、土地改良区という組織です。農業に必要なのは水と土地です。水の流れと土地を整え、管理する仕事を土地改良事業といい、この事業を行うのが土地改良区という公法人で、農家で組織されています。
土地改良区の組織は
土地改良地区は、水系などによって分かれており、都道府県知事の認可で設立されます。土地改良地区には、区域内の農業者全員が加入しなければなりません。
3分の2の同意で事業実施
土地改良事業については、3分の2の同意で実施されます。土地改良事業には、国が事業主体となる国営、都道府県が事業主体となる都道府県営、土地改良区や市町村が事業主体となる団体営があります。国営や都道府県営の場合も、土地改良区の農業者の同意・申請を経て事業を実施します。
農家が賦課金を負担
土地改良区の事業費は農業者が負担します。事業で恩恵を受ける人が負担するお金を賦課金といいます。耕作放棄地でも賦課金がかかります。滞納があったときは、税金のように強制執行により徴収されます。農地転用などによって資格を喪失するときは、土地改良区への通知義務があり、決済金を納めなくてはなりません。
最高議決機関は「総会」または「総代会」で、予算などを議決します。役員には理事と監事がおり、理事は運営を行い、監事は監査を行います。理事の定数は5人以上、監事の定数は2人以上で、任期はいずれも原則4年です。定款で4年以内に定めることもできます。
全国の土地改良区245万ヘクタール
農水省のまとめでは、令和4年時点で、土地改良区は全国で4126あり、面積は245万ヘクタール、組合員数は339万人います。
土地改良区の仕事は
土地改良区の仕事は、土地改良事業、つまり水の流れと農地を整え、管理することです。
水の流れを整える(維持管理)
農業に使う水は、川からの水については、頭首工(とうしゅこう)で水を堰き止め、あるいは揚水機のポンプで水を取り入れます。ダムやため池から水を引く場合もあります。こうした水を水路に流して、田畑を巡らせ、排水機で川に流します。土地改良区はこの流れを管理します。
土地改良区の仕事
- 揚水機、排水機、頭首工の点検
- 水路の浚渫、草刈り、ゴミ撤去
- ため池の水漏れ点検
- 農業用ダムの点検
農地を整える(整備)
土地の区画を大きくして機械を動かしやすくし、農作業を効率化します。合わせて農道や水路を整備します。
土地改良区の仕事
- 分散した農地の区画を整理して大区画化
- 農道の整備
- 用排水路の整備
奈良県内の土地改良区は83
奈良県内の土地改良区は、令和4年時点で83あり、面積は1万4,904ヘクタール、組合員数は3万8,959人です。規模の大きなところとしては、大和平野土地改良区、大和高原北部土地改良区などがあります。
大和平野土地改良区(吉野川分水)は、受益面積が6,726ヘクタールあり、9市10町1村が関係しています。組合員は2万人を超え、総代105人、職員30人にのぼります。
令和6年度の賦課金は、10アールあたり5,200円、地区から除外するときの決済金は1平方メートルあたり419円です。
奈良県内の主な土地改良区
受益市町村 | 組合員数 | 設立 | |
大和平野土地改良区 | 奈良市、大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、御所市、香芝市、葛城市、安堵町、川西町、三宅町、田原本町、高取町、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町、大淀町 | 20,315人 (令和3年7月1日現在) | 昭和30年3月10日 |
大和高原北部土地改良区 | 奈良市、天理市、宇陀市(室生)、山添村 | 2,807人 | 昭和53年5月4日 |
関連条文
土地改良法
▽土地改良法第42条第2項
土地改良区の組合員が、組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合において、前項の承継又は第三条に規定する資格の交替がないときは、その者及び土地改良区は、その土地の全部又は一部につきその者の有するその土地改良区の事業に関する権利義務について必要な決済をしなければならない。
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